第五回 テッド・バンディ
邑上の私見なんですけども、ヘンリーに関わる人をばんばん紹介していくコーナーです!さてさて第四回!
(ほんまに私見なので異論異説あるかとは思います)
「Mr.American Psycho」セオドアロバートバンディ(1946.11.24 〜1989 処刑)
シリアルキラー(連続殺人鬼)って言葉はバンディを指す為に用いられたんですよ。
邑上的に、何故彼が特別な殺人鬼なのかっちゅーと…
人間として魅力的で、高い教育を受け、そして、「俺たちの世界」の住人だからだと思うんですね。
一般的に、皆が想像した彼以前の殺人鬼は、
ボストン絞殺魔アルバート・デサルヴォの様に9歳の頃親に農家に売られた辛い過去を持ってたり、エド・ゲインの様に辺鄙な農場と薄汚れた家に死体に囲まれ住む孤独な男だったり、頭の中に響く声に動かされ殺人を犯す狂人ハーバードマリンみたいな……
なんと言うかアングラで闇の深い、我々とは無関係な異常な世界の住人だったんですね。
まあ、理解外の異次元のモンスターみたいなね、括り。
ところがバンディは、無害で、俺たちと同じ価値観を持つと信じる親愛なる隣人でありながら…
死体を愛し、女性を己の欲望を満たすものとしか見えていない人面獣心のケダモノだと言うのが、「特別」なんです。
バンディはその幼少期は、学生時代も人気者でもなければ負け犬でもない。
典型的な学生で、言ったら我々の大半と同じ感じ。片親ではあるけども。
ただ一つ、彼が14歳のとき、近隣住民の8歳の女の子が失踪した事以外は…。
バンディは、おじいちゃんを大分慕っていたらしい。
だがこのおじいちゃん…聖職者である傍ら妻を殴り、大量のハードなポルノを所持しているハードじいちゃんだった(苦笑)
バンディの幼少期、彼本人も語らない、バンディ最大の謎と言われる空白の4年間があって、この頃に彼の精神に大きな影響を与えた何かがあったんじゃないかって考察があるのだけど、僕は、何もないから別に話してないんだと感じる。
「殺人鬼は幼き日に傷付けられ、奪われたものが大人になって、復讐者になる」
っていうのは、普通の人間が彼らを理解出来ないから理解出来る理由が欲しいから生まれる考えというか願いなんじゃないかな?
理由がなくてもサイコは発生するよ。
それがアメリカン・サイコ「テッド・バンディ」なんじゃなかろうか。
そして、1966年。
運命の人ステファニーと出会う。
彼女は長身で美しく、長い黒髪を真ん中から分けていた。
バンディの猛烈なアプローチで付き合う事になる。
だが!1967年の春、彼女はバンディに飽き、フラれる。
そしてこの頃にバンディは覗き行為に耽溺する。彼女とのデートをすっぽかしてもしてた(笑)更にはこの春に、大学を落第する。仕事も出世の見込みのない底辺仕事をする事に。
この時点であらゆるストレス要因が重なり……
暴力的な性への衝動は彼に殺人街道を走らせるには十分だった…
の、だが!!
バンディはギリギリで踏みとどまった!!!
バンディは絶望に向き合い、傷を癒し、人生を歩み、夢を追う事にベストを尽くせる人間だった。
これが他のシリアルキラーにはない、彼の魅力。逆境から立ち直り、歩き続けるという事。
このバイタリティ、あたしも欲しい…(笑)
1968年、選挙スタッフになるが、選挙に落選し職を失う。
しかし、すぐまた職を確保。
デパートの販売員となりたちまち有能な店員と評判になる。特に女性客に。
その間もフラれた元カノ、ステファニーに手紙を送ったり電話をかけたりしている。
金が貯まると、デパートの仕事を辞め、フィラデルフィアでテンプル大学に入学し、演劇学を学ぶ。
この際に学んだ、演技と舞台メイクが後、彼の生涯に役立つ技術となる。
芝居上手かったんだろうなあ…。
そして…
1971年9月。心理学研究最後の学年が始まる。
自殺救済電話相談のカウンセラーの職を得る。同僚の女性は当時のバンディをこう証言した。
「電話では話に覆い被さる様に背中を丸め、相手を励まし、親身になり、思いやりを示し、決して相手を適当にあしらったり、平静さを欠いたことはなく、誰もが他の人には言えない事を彼には話した。彼は沢山の人を殺害しました、ですが、沢山の人を救ったのも事実なのです。」
あ、この同僚とは後のバンディの殺人裁判中結婚します。
これ、余談なんだけど、ザック・エフロンが演じた「テッド・バンディ」で登場する彼女は実際の人物と瓜二つで演じた役者さん素晴らしかった!
1973年5月。共和党中央委員会のコンサルタントとして雇われ、そしてユタ大学法科大学院への入学を許可される。
この時期に後の犯行でも使われる車(当時では金持ちの街乗り用のクルマらしい)を買う。
バンディはこの夏、カリフォルニアに共和党大会の為に派遣される。
そこには、かつての恋人ステファニーがいた。
バンディは彼女を訪ねる。
「持ってる男」のオーラむんむんのバンディ様に、ステファニーは会った途端メロメロ!!
フラれてからの6年間のバンディの行動はこの為にあった!!!
そしてえ!フラれた恋人を自分に惚れさせる、と言う空想を、猛烈な異常な迄の執念で達成したのだ!!!!
凄い!そこに痺れる憧れる!!!
だが、そこでバンディは気付く…
俺が欲しかったのはこれじゃない
法律家になって黒髪の美人の心を勝ち取る?
いやいやいや違うわ
こんなものは無意味だ偽物だ
俺が求めていたのは
女の肉体だ
愛だの関係だのは俺には要らない
物言わぬ、ただの肉が欲しいんだ
そして、ステファニーをフる!
そこから彼女とよく似た、黒髪を真ん中で分けた、長身で美人の女性を殺し始める。
殺人鬼であり親愛なる隣人「テッド・バンディ」となる。
最終的には(分かっているだけで)36名の被害者を出した。全米で好き放題殺したし、彼は欲望を我慢出来ないからもっといるでしょう。スマートな表向きとは違い本性は極めて残忍で人間性が欠如していて、亡骸を何度も犯す程のネクロフィリア☠️❤️
またバンディは演劇学校のスキルを活かし、百面相の様に容姿を変え、ターゲットに合わせた演技をし、女性を巧みに拉致し、殺し、奪い、愉しんだ。
※実はこの時期に付き合っている女性もいたんやで…映画「テッド・バンディ」はこの彼女の目線でも描かれる。
また彼は逮捕されても何度も脱走した。これはバンディすげえっちゅーより周りがマヌケだった。
そんなバンディだが、犯罪後期には他のシリアルキラー同様に犯行の劣化が進む。
邑上の私見だけど、多分疲れたんだろうね。
しかし、人殺しがやめられない。
女子寮に深夜潜り込み、棍棒で殺し回ると言う錯乱したかの様な犯行に及ぶ。もう、黒髪真ん中分けじゃなかろうがお構いなし。深層心理では誰かに止めて欲しかったんじゃないかなあ。止めたくないとの二律背反した心。
最後の被害者は12歳の少女でした。
逮捕された彼は裁判で一貫して無罪を主張。無期懲役を狙う弁護士と真っ向から裁判方針の違いでぶつかり、バンディは弁護士をクビにしてしまう。二回も!
そして自分で自分を弁護する。ロースクールで培った能力、鮮かな弁舌、演劇学校で学んだ演技を用いて。
だが、これがバンディの運命を電気椅子へと向かわせる。
判決は死刑。
バンディはこう語った
「俺は彼女らを苦しめたり傷つけるのが楽しかったのではない
真に俺を魅力したのは…
獲物を狩り、捕らえ、物理的に所有する事だ
鉢植えや、絵や、ポルノを所有するのと同じさ」
そう言った彼は処刑直前に震えていた。
刑務所の周りは彼の死刑を望み狂乱する者達が叫んでいた。
「バンディ地獄に落ちろ!」「燃えろ!バンディ!」と。
死の恐怖と他人の悪意に彼は震え、呟いた「俺よりもやつらの方が異常だよ」。
「君程の才能があれば有能な弁護士にもなれたろうに。残念だ。」
死刑判決の際裁判長にそう言われた男、テッド・バンディは電気椅子で焼かれて死んだ。
今回の舞台に彼が登場します。お楽しみに。
邑上が小学生時代の自由研究で研究して怒られた人物を今こうして語れるのは不思議ですね笑
因みに、テッド・バンディも映画「羊たちの沈黙」ハンニバル・レクターのモデルの一人です。
彼が牢獄からとある連続殺人事件に捜査協力していたのが起因しています。
グリーンリバーキラーと呼ばれたこの事件の犯人は70人以上を殺害したとされる事件…
だが、それはまた、別のお話……
(文:邑上笙太朗)
邑上笙太朗(むらかみしょうたろう)
2、3年前まで舞台経験はなく、ナレーションやら声の芝居やら何やらしてました。2016年末に集団as if〜に入団。その後、Voyantroupe、虚飾集団廻天百眼、集団NO PLANなど、舞台や朗読での客演多数。2018年に同劇団解散。以後野良で活動中。家なき子です。
邑上笙太朗twitter
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